ひざの痛みと変形性ひざ関節症
ひざの痛みの原因には加齢、肥満、若い頃のひざへの外傷など、さまざまなものが考えられます。
そして数あるひざ疾患の中でも多く見られるのが変形性ひざ関節症です。
変形性ひざ関節症とは、関節のクッションである軟骨や半月板が擦り減り、骨が変形する病気です。
日本では現在、自覚症状が無い人を含めると3,000万人、実際に治療が必要な患者様は1,000万人いるともいわれています。
また、女性の発症率が高い病気でもあり、男性に比べ女性患者が1.5〜2倍の割合となっています。
変形性ひざ関節症の年齢・性別割合
変形性ひざ関節症の原因は?
発症の原因や進行の理由は一つではなく、さまざまな要因が関係していると考えられています。
症状と進行
1 健康なひざ関節
ひざ関節は、大腿骨(太ももの骨)、下腿骨(すねの骨)、膝腿骨(お皿の骨)の3つの骨と軟骨、半月板などのクッション材、大腿四頭筋という身体の中で一番大きい筋肉からできています。
健康なひざ関節では、衝撃を吸収し体重を支える役割があります。
※各項目の症状をチェックしてみてください。
2 初期の変形性ひざ関節症
※各この時期に MRIで発見! 早期治療で進行を抑える事が大切です!
軟骨がすり減り始めます。
それにより昔と比べひざが伸びにくい、曲がりにくい「ひざ関節可動域の制限」やひざに力が入りにくい「筋力低下」を感じることがあります。
日常動作では、歩いたり立ち上がったりする際、ひざに違和感を感じ始めます。
症状
□ ひざがこわばる
□ 歩き始めが痛い
□ 正座すると違和感がある
3 進行期の変形性ひざ関節症
軟骨がさらにすり減り関節の隙間が狭くなり、O脚やX脚の状態に。
見た目にも変形性ひざ関節症が分かるようになります。
ひざ関節可動域の制限と筋力低下も進行し、ひざが完全に伸びなくなったり、立ち上がりが大変になります。
この時期には、ひざが外に動揺する歩行の現象が見られる事もあります。
症状
□ 階段の昇降が痛い
□ 脚の曲げ伸ばしがつらい
□ ひざに水がたまる
4 末期の変形性ひざ関節症
軟骨が完全になくなり、関節の隙間がなくなります。
ひざ関節可動域の制限がさらに進行し、ひざをほとんど動かせなくなります。
この状態になると、じん帯を損傷している可能性もあり、歩く際には杖が必要となる場合があります。
症状
□ 平地の歩行も痛い
□ 動かない時も(寝ていても)痛い
ひざの治療と再生医療
膝の治療として再生医療を行う場合、その治療対象には主に下記の疾患が挙げられます。
- 1)変形性膝関節症
- 2)半月板損傷
- 3)離断性骨軟骨炎
- 4)靭帯、腱などの損傷
中でも最も多く行われるのは変形性膝関節症です。ここでは代表的疾患である変形性膝関節症の治療について説明します。
変形性膝関節症は、クッションの役割を担っている軟骨が摩擦などですり減ったり、骨に変形を生じる退行性の疾患です。
日本では自覚症状を有する患者さんは約1,000万人、潜在的な患者さんを含むと約3,000万人いると推察されており、高齢化社会における日本では今後ますます増加していくことが予想される疾患です。
一般的に治療は第1の治療として保存的治療を行います。
これは体重減量などの教育指導や鎮痛剤などの投薬、ヒアルロン酸などの関節内注射、理学療法などの機能回復訓練、そして足底板(インソール)などが挙げられます。
これらの治療で症状の軽快、改善が見られないケースで第2の治療が選択されます。
第2の治療として、関節鏡手術や骨切り術、そして代表的な手術方法である人工膝関節置換術が挙げられます。
再生医療を導入する前は、保存的治療である第1の治療と手術治療である第2の治療しか選択肢はありませんでした。
ところが、第1の治療から第2の治療へ移行できない(進めない)患者さんも少なくありません。
様々な理由が挙げられますが、大きく分けると2つ挙げられます。
1)個人的、社会的背景が原因
手術に対する恐怖や不安感、家庭や仕事の事情で手術(入院)ができない、スポーツを継続したい(手術を受けるとスポーツを断念せざるを得ない)、経済的に難しいなど。
2)医学的理由が原因
高齢や全身状態(心疾患、脳梗塞、糖尿病などの基礎疾患がある)などが原因で手術に対するリスクが高いなど。
このような方々は第2の治療に進めず、行き場を失い、諦めて通院しなくなるケースや民間療法、健康食品などの代替医療に頼る方もいらっしゃいます。
長年にわたり、人工膝関節置換術を専門として行ってきた私には悩み大きな問題でした。そこで第3の治療という位置づけで再生医療を開始しました。
再生医療は第3の治療という位置づけ
第3の治療とは、第1の治療では改善しない、しかし第2の治療にはさまざまな事情で進めない、手術を行えない患者さんに対してその隙間を埋めるという位置づけになります。これを第3の治療として再生医療を行っています。
しかし、第3の治療として再生医療を希望される患者さんは、第1の治療、つまり保存的治療で効果がなく第2の治療、手術を受けたくない、もしくは受けられない状況のため、その多くは変形性膝関節症としてはかなり進行した末期の状態であることがほとんどです。
そのため、再生医療の治療方法を行っても満足できない結果に終わることもあります。
現在、当院を含め再生医療を提供している医療機関での治療報告から「進行すればするほど治療の奏効率は低下する」ということが分かっています。
実際、治療成績はどの程度なのかについてはほかの記事を参照してください。